ランナー膝を治す為に必要なこと

「ランニングを始めたけど、膝の外側が痛くて思うように走れない…」
「練習を重ねると膝の痛みが増して、走る距離が増やせない…」
「アイシングやストレッチをしても、結局また痛みがぶり返してしまう…」
こんな悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか?
こんにちは、大阪市旭区にある新森桂整体院の桂 寛章です。
ランニングをすると、膝の外側がズキズキと痛み出し、思うように走れない日が続くのは、本当にもどかしいですよね。
また、大会に向けて追い込みたいのに、痛みで練習を中断せざるを得ない経験をされているかもしれません。
ランナー膝(腸脛靭帯炎)は、ランナーにとって厄介なケガの一つです。しかし、適切な知識とケアによって、腸脛靭帯炎は良くなります。
今回のブログでは、腸脛靭帯炎の原因から改善方法などについて書きました。ぜひ最後までお読みください。
ランナー膝(腸脛靭帯炎)について
腸脛靭帯(ちょうけいじんたい)は、骨盤の前面にある上前腸骨棘(じょうぜんちょうこつきょく)から始まり、大腿部の外側を通って脛骨の外側面にあるガーディー結節に付着する、幅広くて丈夫な靭帯です。この靭帯は、大腿骨外側から脛骨外側面に伸びており、膝関節の安定性を保つ重要な役割を果たしています。
ランニング中の腸脛靭帯の役割
ランニング中、腸脛靭帯は以下のような重要な役割を担っています。
- 着地時:衝撃を吸収し、膝が内側に倒れ込むのを防ぐスタビライザーとして機能します。
- 立脚期:膝関節の安定性を維持し、スムーズな屈伸運動をサポートします。
- 蹴り出し時:大腿筋膜張筋や大臀筋と協力して、股関節を伸展させ、推進力を生み出します。
腸脛靭帯と連携する筋肉
腸脛靭帯と密接に関係している主な筋肉は以下の通りです。
- 大腿筋膜張筋:腸脛靭帯の起始部につながっており、股関節の屈曲や外転、内旋といった動作をサポートします。
- 大臀筋:股関節の伸展や外旋といった動作をサポートし、腸脛靭帯を介して膝関節の安定性にも貢献します。
これらの筋肉がバランス良く働くことで、腸脛靭帯への負担を軽減し、スムーズなランニングフォームを維持することができます。
ランナー膝とは?
腸脛靭帯炎は、別名「ランナー膝」とも呼ばれるスポーツ障害で、膝の屈伸運動による摩擦が原因で発症します。主な症状は以下の通りです
腸脛靭帯炎の症状と進行
- 初期
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- ランニング後や運動後に膝の外側に軽い違和感や鈍痛が現れる
- 痛みは一時的で、休息により和らぐ
- 中期
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- 走行距離が増えるにつれて、膝の外側がズキズキ、またはチクチクと刺すような痛みに変わる
- 膝を曲げ伸ばしする際に痛みが増強する
- 坂道や階段の上り下り、長時間のランニングで症状が悪化する
- 安静にしていると痛みは和らぐが、ランニングを再開するとすぐに痛みが再発する
- 後期
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- 歩行時や日常生活でも膝の外側に痛みを感じる
- 夜間痛や安静時痛が現れることもある
- 日常生活に支障をきたすほどの痛みが続く
ランナー膝になる原因
ランナー膝は単なる「使い過ぎ」だけでは説明できません。同じ距離を走っても発症する人としない人がいる理由には、以下の要因が挙げられます。
- 足裏外側への体重負荷
足裏の外側に体重が偏ることで、腸脛靭帯に過度な張力がかかります。これにより、腸脛靭帯と大腿骨外側顆との間で摩擦が増加し、炎症を引き起こします。 - ニーイン(膝が内側に入る動き)
膝関節が内旋することで、腸脛靭帯が大腿骨外側顆に強く押し付けられ、摩擦が増加します。これが繰り返されることで、炎症が生じやすくなります。 - 不適切なシューズ選び
自分の足のタイプ(ハイアーチ、ローアーチなど)に合っていないシューズを使用すると、足裏への荷重バランスが崩れ、腸脛靭帯への負担が増加します。 - 急激な練習量の増加
体が適応する時間を与えずに、急激に走行距離や強度を上げることで、腸脛靭帯に過度な負担がかかります。 - 路面状況
傾斜のある路面や硬い路面での長時間のランニングは、腸脛靭帯への負担を増加させます。 - 筋力不足や柔軟性の低下
特に股関節周りの筋力不足や、大腿筋膜張筋、大腿四頭筋、ハムストリングスの柔軟性低下は、腸脛靭帯への負担を増加させます。
なぜランナー膝は起こるのか?
ランナー膝(腸脛靭帯炎)の根本的な原因には、身体全体の歪みやフォームの乱れがあります
身体の歪みと重心位置
身体が歪むと、体の重心がズレ、足にかかる3点の重心位置にもズレが生じます。すると以下のような問題の原因となります。
- 外足加重
足の裏の外側に体重が偏ると、太ももの外側に負担がかかり、腸脛靭帯炎のリスクが高まります。 - 内足加重
足の裏の内側に体重が偏ると、扁平足になりやすく、ランニング時の衝撃吸収能力が低下します。また、重心が内側に入ることで、膝が内側に入る「ニーイン」が起こりやすくなります。
姿勢と筋肉バランスの重要性
日常的な姿勢の悪さや筋肉バランスの崩れは、ランニングフォームに大きな影響を与え、腸脛靭帯炎の原因になりやすいです。以下では、具体的な例を挙げながら、どのように筋肉や骨格の状態が膝に負担をかけるかを解説します。
内転筋やハムストリングスへの過度な負担
内転筋(太ももの内側の筋肉)やハムストリングス(太ももの裏側の筋肉)は、膝関節を安定させる重要な役割を担っています。しかし、これらの筋肉に過度な負担がかかると、膝が内側に入りやすくなり、「ニーイン」と呼ばれる状態を引き起こします。
- どうして負担がかかるのか?
日常生活で座りっぱなしの時間が長いと、内転筋やハムストリングスが硬くなる傾向があります。これにより、筋肉が十分に伸び縮みできず、ランニング中に膝関節を正しい位置で支えることが難しくなります。また、これらの筋肉が硬いと、膝が内側へ倒れ込みやすくなり、腸脛靭帯への負担が増加します。
大臀筋の弱化
大臀筋(お尻の筋肉)は、股関節を外旋させたり伸展させたりする役割があります。この筋肉が弱化すると、股関節が内旋気味になり、「ニーイン」を助長します。結果として、腸脛靭帯に過剰な負担がかかりやすくなるのです。
- どうして大臀筋が弱くなるのか?
現代人は座る時間が長いため、大臀筋が十分に使われないことが多いです。これにより、大臀筋は「眠った状態」になり、本来持つべき力を発揮できなくなります。その結果、ランニング中に股関節周辺の動きが不安定になり、膝への負担が増加します。
骨盤の歪み
骨盤は体幹と下肢をつなぐ重要な部分であり、その位置や角度は全身の姿勢に影響を与えます。骨盤が前傾(腰を反らせた状態)または後傾(腰を丸めた状態)していると、腰椎や股関節の動きに影響し、その結果ランニングフォームが乱れる可能性があります。
- どうして骨盤が歪むのか?
長時間同じ姿勢でいること(デスクワークなど)や片足重心で立つ癖などによって骨盤が歪みやすくなります。また、大臀筋や腹部周辺のインナーマッスル(体幹)が弱化すると、骨盤周辺の安定性が低下し、歪みにつながります。 - 骨盤歪みと腸脛靭帯炎との関係
骨盤が歪むことで股関節・膝関節への負荷バランスが崩れます。例えば、骨盤前傾の場合には太ももの前側(大腿四頭筋)が過剰に働きやすくなり、一方で後側(ハムストリングス)は伸びきった状態になります。このアンバランスによって腸脛靭帯へのストレスも増加します。
姿勢と筋肉バランス改善で得られるメリット
これら3つの要因(内転筋・ハムストリングス、大臀筋、骨盤)の改善は、それぞれ単独でも効果があります。しかし、それ以上に重要なのは全身的なバランスです。姿勢と筋肉バランスを整えることで以下のようなメリットがあります。
- ランニングフォームが安定し効率的になる
- 膝関節への負担軽減による怪我予防
- 腸脛靭帯炎だけでなく他部位(足首・股関節)の障害予防
腸脛靭帯炎で悩んでいる方は、自分の日常的な姿勢や動作習慣から見直し、小さな改善から始めてみてください。
当院での施術
当院では、「ランナー膝」の痛みを単に膝の問題としてだけでなく、体全体のバランスの乱れから生じる症状として捉えています。そのため、以下のような総合的なアプローチで施術を行っています
身体の歪みの調整
身体の歪みを検査し、必要に応じて調整を行います。これにより、膝への負担を軽減し、正しい姿勢での動作を促します。
股関節と足関節の機能改善
股関節や足関節の可動域検査や筋力検査を行い、これにより、膝への負担を分散させ、より効率的な動きを可能にします。
足裏の重心と調整
足裏の重心のずれを検査し、必要に応じて足指の運動指導を行います。これにより、足裏全体で地面をしっかりと捉え、安定した歩行や走行を可能にします。
運動指導
日常生活やスポーツ活動に合わせた、適切な運動指導を行います。これにより、再発予防と長期的な改善を目指します。
このような総合的なアプローチにより、単に症状を抑えるだけでなく、根本的な原因に対処することで、長期的な改善と再発予防を目指します。
まとめ
腸脛靭帯炎は、ランナーにとって厄介な痛みですが、適切なケアをすれば改善可能な疾患です。また重要なのは、一時的な痛み止めではなく、根本的な原因を解消することです。
当院では、腸脛靭帯炎を膝単独の痛みと捉えずに、身体全体からアプローチすることで、効果を上げています。もし腸脛靭帯炎で悩んでいる方は、ぜひ一度ご相談ください。
最後までお読みくださり、ありがとうございました。
(監修:鍼灸学士・柔道整復師 桂 寛章)